誘電率 は、物質に電場
を印加した時にどのくらい分極
するかを表す量ですが、電束密度
との関係で、
ここで、 は電気感受率で、




物質に電場を印加すると分極が生じます。分極の起源には様々なものがありますが、いずれにしても、 物質に電場が印加されて分極が現れて安定状態になるまでには時間がかかるのです。式の上では、 電場 に対して分極
の応答が遅れます。 分極
が遅れるってことは、電束密度
も遅れます。いまは誘電率
を気にしたいので、電場
と電束密度
の時間的ずれだけに着目します。簡単のため、電場を
、電束密度を
として、電束密度が
だけ電場よりも遅れるとします。電束密度の式を変形して電場で表せるようにすると、
(1)







この遅れによって、どれだけの電気エネルギーが使われるのかを計算します。単位体積当たりの電力 を1周期分積分して周期
で割ります。 単位体積当たりの電力
は電流密度
と電場
の積であり、電流は電荷の時間微分なので、電束密度
の時間微分は電流密度
に相当します。
(2)
ここで、 電場


(3)
となり、これだけエネルギーを消費していることになります。 遅れ

導電性がある物質に電場を加えたとき、ジュール熱としてどれだけエネルギーを消費するのかは、 を導電率として、
(4)
で与えられますので、先ほどの誘電損失と比較して、
という関係式が得られます。複素誘電率の虚数部は試料の導電率に相当する量(角周波数で割りますけど)を表していることが分かります。