X線結晶構造解析

X線を試料結晶に当てたときに回折されるX線の方向と強度を観測することで結晶を構成する原子や分子がどのように配置されているのかを計算して求めるもの。

X線というとレントゲンを思い浮かべます。これはX線が試料を透過する性質を利用して試料内部の様子を探るものです。X線結晶構造解析ではX線が試料を透過する性質ではなく散乱という現象を利用します。原子にX線が照射されると原子の周りを回る電子がX線に揺さぶられて、電子が新たな電磁波を生み放射する散乱(トムソン散乱)が起きます。

このような散乱波を生みだす原子が規則正しく配列しているとき、特定の方向の散乱波は強められる干渉現象が起きます。これを回折といいます。結晶を構成する原子や分子はおよそ 0.1 nm (1 Å, 10-10 m) の間隔で並んでいます。このくらいの波長であるX線を結晶に照射すると、結晶を構成する原子や分子の並び方の規則性に応じてある決まった方向へX線が回折されます。

入射X線と回折X線の方向の関係が、原子や分子が形作る面に対して鏡のような関係にあることから、回折という言葉の代わりに「反射」という言い方をすることもあります。鏡に光を当てると鏡に対する入射角と同じ角度で光が反射され、入射角を変えるとそれに応じて反射角も変わりますが、回折の場合には、ある特定の入射角のときのみ回折が起こることが鏡と異なる点です。

写真は単結晶試料用の4軸回折計です。リング状のサークルの中心に試料が取り付けられ、試料の向きを様々な方向に向けながらX線を照射して、その回折X線を右手前の白い箱で検出します。

Four-circle diffractometer
Four-circle diffractometer

 

X線回折実験からは、回折X線の角度、(方位)、強度の情報が得られます。これらから結晶構造を決定するのが結晶構造解析です。結晶は特定の構造(単位胞)が繰り返し配列した空間的な格子を形成しています。回折方向は並び方の規則性により決まるので、回折角度から結晶格子の格子定数(a,b,c, α β γ)が分かります。回折強度は回折のもととなった原子による散乱で決められますので、数多くの回折強度を測定することによって単位胞内にある原子の情報(原子種、原子位置、原子変位パラメータ)を得ることができます。

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