圧電性

圧電性(あつでんせい)はピエゾとも呼ばれ、応力を加えると電荷を生じる性質のことをいい、その性質を持つ材料を圧電体と言います。

逆に材料に電圧を加えると材料が変形し(歪み)ます(逆圧電効果)。身近なところでは、電子ライター(ボタンを押すとカチッと火花が飛んでガスに引火するもの)の着火装置、携帯電話のスピーカー、インクジェットプリンタのインク噴出ノズルに圧電体が使われています。

圧電性を持つ材料には、石英、トパーズ、トルマリン(電気石)などの天然に産出される鉱物があり、工業的には、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、酸化亜鉛などのセラミックスが使われています。いずれも材料の結晶構造が応力により変形することで電気的なバランスも崩れて電荷が生じます。

高分子材料のポリフッ化ビニリデン(PVDF)はそのままでは圧電性を示しませんが、一方向に引き延ばしたり、薄膜にすることによって、電気双極子を持つモノマー(高分子の基本単位)の鎖が平行に並んで、ポーリング処理の後には圧電性を示します。木材、骨、絹、DNAなどの生物材料も圧電性を示すといわれていますが、圧電性のメカニズムはよくわかっていない点も多いようです。

すべての強誘電体焦電体には圧電性があります。上記のチタン酸バリウムなどやポリフッ化ビニリデンは強誘電性を示します。

映像は、ロッシェル塩の結晶を木づちで叩いて電球を光らせた様子です。電球にはネオン管を使用しています。ロッシェル塩の結晶のa面にアルミ箔の電極を貼り、電極からの電気がネオン管に流れるように配線します。結晶を粉々に砕いてしまわないようにベニヤ板で結晶をはさんでいます。(絵と音がずれていますね:p)

結晶は構成する原子の並び方から32種の結晶点群に分けられますが、そのうち、対称中心を持たない結晶点群(21種)のうち立方晶 432 を除く20種の点群、

    \[ 1, 2, m, 222, mm2, 4, \overline{4}, 422, 4mm, \overline{4}2m, 3, 32, 3m, 6, \overline{6}, 622, 6mm, \overline{6}2m, 23, \overline{4}3m$ \]

に属する結晶のみが圧電性を示します。

電場 E_i と応力 \sigma_{ij} を独立変数にすると、電束密度 D_i と歪み e_{ij} の微分は、

(1)   \begin{equation*}\begin{align} dD_i & = \left(\frac{\partial D_i}{\partial E_j}\right)_\sigma dE_j  + \left(\frac{\partial D_i}{\partial \sigma_{jk}}\right)_E d\sigma_{jk} \\ de_{ij} & = \left(\frac{\partial e_{ij}}{\partial E_k}\right)_\sigma dE_k  + \left(\frac{\partial e_{ij}}{\partial \sigma_{kl}}\right)_E d\sigma_{kl} \end{align}\end{equation*}

となり、それぞれの係数が、誘電率 \varepsilon_{ij} = \left(\frac{\partial D_i}{\partial E_j}\right)_\sigma、 圧電係数 d_{ijk} = \left(\frac{\partial D_i}{\partial \sigma_{jk}}\right)_E、逆圧電係数 d_{ijk} = \left(\frac{\partial e_{ij}}{\partial E_k}\right)_\sigma、弾性率(弾性コンプライアンス)  s_{ij} = \left(\frac{\partial e_{ij}}{\partial \sigma_{kl}}\right)_E を表します。なお、熱力学関数の対称性から圧電係数と逆圧電係数は等しくなります。

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