焦電気

焦電気(しょうでんき)は、パイロ電気、ピロ電気とも呼ばれ、温度を変えた時に材料表面に生じる電荷を差します。 焦電気が生じる現象を焦電効果といい、この現象を示す材料を焦電体と呼びます。焦電体はすべて圧電性を持っています。すべての強誘電体には焦電性があります。

電気石(トルマリン)や酒石酸など、焦電体の結晶は常に分極していて表面に電荷が生じていますが、通常は空気中のイオンなどを吸着して中和(無極化)されているために分極は観測されません。焦電体に熱を加えて温度を変えると分極の大きさが減り、表面の電荷量が減るために中和のバランスが崩れ表面の電荷の変化を観測できます。温度が変わった時に変化する電荷量を電圧の変化として検出する焦電素子として焦電体は使用されています。焦電素子は温度変化を検出するので、集光レンズと合わせて赤外線センサーに用いられます。赤外線センサーは人間が来たことを感知して扉をあける自動ドア、防犯用ライトなどに使われています。


結晶は構成する原子の並び方から32種の結晶点群に分けられますが、そのうち、極性を持つ結晶点群(10種)、

    \[ 1, 2, m, mm2, 4, 4mm, 3, 3m, 6, 6mm \]

に属する結晶のみが焦電性を示します。

電場 E_i と温度 T を独立変数にすると、電束密度 D_i とエントロピー S の微分は、

(1)   \begin{equation*}\begin{align} dD_i & = \left(\frac{\partial D_i}{\partial E_j}\right)_T dE_j  + \left(\frac{\partial D_i}{\partial T}\right)_E dT \\ dS & = \left(\frac{\partial S}{\partial E_i}\right)_T dE_i  + \left(\frac{\partial S}{\partial T}\right)_E dT \end{align}\end{equation*}

となり、それぞれの係数が、誘電率 \epsilon_{ij} = \left(\frac{\partial D_i}{\partial E_j}\right)_T、 焦電係数 p_i = \left(\frac{\partial D_i}{\partial T}\right)_E、電気熱量効果係数 p_i = \left(\frac{\partial S}{\partial E_i}\right)_T、 熱容量 C = \left(\frac{\partial S}{\partial T}\right)_E を表します。なお、電気熱量効果は焦電効果の逆効果ですが、熱力学関数の対称性から焦電係数と電気熱量効果係数は等しくなります。

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